夜の繁華街
夕方から夜の繁華街を、ペットのブタを連れて歩いた。小さなリードをつけて、ゆっくり歩くひとたちに遭遇した。犬なら珍しくないが、ブタなので人が振り返る。二度見する人、笑う人、写真を撮りたそうにする人。ブタはそんなことを気にせず、地面の匂いを嗅ぎながら静かに歩いている。ネオンの光の中を、ピンク色の背中がのんびり進んでいく。 そのとき、後ろから歩いてきた男性たちの会話が聞こえた。 「でもさ、ああいう人でも昼職の人もいるよ」 その言葉に少し驚いた。わざわざそんなことを確認する会話をしていることに。そういう世界には立ち入ることが皆無だったので、恐怖心さえ覚えた。しかもその男性は、服装もきちんとしていて、裕福そうに見える人だった。そういう人がそんな話をしているのかと思うと、世の中はいろんな人がいるものだと、少し呆れてしまった。 しばらく移動すると、繁華街の明かりが少しずつ減って住宅が増えてくる。すると、その男性が途中で道を曲がり、近くの家の方へ入っていった。どうやら、近所で降りたらしい。さっきまでただの通りすがりの人だったのに、急に「近所の人」になる。それにも少し驚いた。 ブタはそんなことを気にせず、静かに鼻を鳴らして歩いているだろう。夜の街で一番落ち着いているのは、たぶん通りすがりのブタかもしれない。 移動する車内では私より年齢が上のおばさんがマウント取りながら優先席座っていった。気持ち悪い。さっきまで颯爽と歩いていたくせに、マウント取りながら優先席座っていった事の私の後方には貧困層で体調の悪そうな中年女性が乗ろうとするのに、とマウントおばさんを睨みつけたら優先席からマウントおばさんは席を立った。貧困層に見える杖をついた太った長い髪を振り乱す中年女性はまた、さも何か警戒するように私を見た。マウントおばさんを睨みつけ無言の圧力かけてどかしてたからだろう。こっち見るな、お前の為に圧力かけてやったんだから、杖突きに義理などないが、体調も悪そうだし、傷病や貧困層とは差別されすぎて警戒心が強いものだからしかたがない。席を譲らせて、あとはこっち見るな、と邪険な態度を取るしかない。関わりたくない。なぜ、私は無関係なひとに、ましてや足の悪い杖突きのおばさんらに以前に死ぬほど嫌な思いをさせられて、憎んでさえいるくらい気持ち悪いひとたちに優しく出来てしまうのだろう。正直、歩きづらい人たち...