溶けるように生きている
朝、目が覚めた瞬間に「今日も生き延びることができるだろうか」と思った。時計はまだ午前6時半なのに、室温が28度を超えている。すでに負け戦の空気が漂っている。
ベッドから起き上がるだけで、皮膚の奥からじんわり汗が湧き上がる。シャワーを浴びても、出た瞬間にはもう汗をかいている。もはや無限ループ。人間洗濯機。
朝食は冷たいおにぎりと麦茶。火を使うと部屋が地獄と化すため、料理は完全封印。冷蔵庫を開けるたびに「この中に住みたい」と思うが、人権と電気代のはざまで思いとどまる。
出勤すると、駅までの道のりで体力の7割を失う。地面が太陽に恋でもしたかのように熱を吸収して返してくる。アスファルトはきっと復讐してる。冬に文句を言った人類への。
職場の冷房はありがたいが、効きすぎて今度はカーディガンを羽織る羽目になる。なぜこの国は「冷やす」と「凍らせる」の中間が存在しないのか。昼休みは冷たいそうめん。心も麺のようにゆるくなる。
帰宅時、駅から家までのわずか10分が、まるでサバイバル番組。近所の子供が「外で遊ぼう」と言っていたが、尊敬しかない。子供は耐熱仕様なのかもしれない。
夜、扇風機に顔をうずめて耐える。クーラーはなるべく使いたくないが、命と電気代を天秤にかけた結果、命が勝った。生きていれば、請求書にも耐えられる(たぶん)。
明日も暑いらしい。もう8月だし、覚悟はしている。だけど、せめて「人として形を保てる温度」であってほしい。