ADHD・ASDと「天才性」「ギフト性」が無関係である

1. ■ 診断基準は「障害」であり、「才能」ではない

DSM-5-TR や ICD-11において、ADHD/ASDはいずれも精神神経発達症群の「障害」として定義されており、才能や創造性とは一切関連づけられていません。

たとえば、ADHDは「不注意」「衝動性」「多動」により、学業、社会的関係、職業能力において著しい支障をきたすことが診断条件です。

 障害の定義自体が「機能障害」や「社会的困難」を前提としており、そこに「特別な能力」や「恩恵」は含まれない。

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2. ■ 統計的には「認知機能の偏り」は「天才性」と無関

認知テストや知能検査では、ADHDやASDの人々においてしばしばワーキングメモリの低さ、実行機能の障害、処理速度の遅さが見られます。

ADHD/ASDの一部に知的障害(IQ<70)を伴う例も多く、むしろ平均以下の知能が統計的に優勢です(例:CDCによる米国データではADHD/ASD児の約31%が知的障害)。

 「一部の人に見られる能力の偏り(例:記憶力、計算力)」は特殊技能であり、汎用性や創造性のある「天才性」ではない。

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3. ■ 有名人の「後付け診断」や「神話」による誤解

アインシュタインやニュートンがADHD/ASDだったという説は確証がなく、死後の勝手な推測にすぎません。

ADHDやASDに関連づけられる「成功者」たちは、多くの場合正式に診断を受けておらず、そのような逸話は神話化された「例外」の一般化です。

 個別の例外を用いて集団全体にギフト性を当てはめるのは代表性バイアスの誤謬です。

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4. ■ 認知バイアスによる「ギフト論」の広まり

ADHDやASDを「ギフト」とする言説は、多くの場合、自己正当化やアイデンティティの補強のために広まっているにすぎません。

SNSなどで拡散される「ギフテッド」論は、エビデンスに乏しく、商業的・情緒的マーケティングの要素が強いです。

 科学的な根拠に基づかない「ポジティブ神話」は、希望を与える一方で事実を歪めるリスクを含んでいます。

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5. ■ 支援の遅れや差別を助長するリスク

「ADHD/ASDは才能だ」「特別な脳のギフトだ」という誤解は、当事者の支援ニーズを無視・軽視する危険があります。

たとえば、「天才だから支援はいらない」「甘えているだけだ」と思われることで、本来必要な支援や配慮が得られなくなる事態も。

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◾ 結論:「ADHD/ASD=ギフト」という主張は誤り

確かにADHDやASDの人が一般人同様に特定分野で秀でることがあるのは事実ですが、それは障害特性の偶発的な現象に過ぎません。

その特性が社会的困難・機能不全と結びつくかぎり、それは「ギフト」ではなく「障害」であることに変わりはありません。

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◾ まとめ

項目 結論

天才性との関係 科学的根拠はなし

ギフトという表現 精神医学的に不正確

有名人との関連性 推測であり、証明不能

社会的影響 誤解や支援不足を助長



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